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地方議会議員年金制度の沿革

1 互助年金制度の創設

   地方公共団体の議会の議員(以下「地方議会議員」という。)の年金制度は、昭和36年6月8日公布、同日施行の「地方議会議員互助年金法」(以下「互助年金法」という。)により地方議会議員の互助年金制度として同年7月1日にスタートしました。
   この互助年金制度は、地方公共団体の議会の任務の重要性にかんがみ議員及びその遺族の生活の安定に資することを趣旨とするもので、任意加入のものでした。この互助年金を給するための組織として、地方議会議員の区分に応じ、都道府県議会議員互助会、市議会議員互助会、町村議会議員互助会がそれぞれ設立されました。

2 議員年金制度の発足

   昭和37年9月8日、地方公務員共済組合法(のちに「地方公務員等共済組合法」と改称。)が制定される際、同法の第11章に「地方議会議員の年金制度」として規定されました。同法は同年12月1日に施行、ここに互助年金法は廃止されるとともに同法に統合され、すべての地方議会議員を対象とした強制適用の年金制度となりました。この年金給付を行う組織として地方議会議員の区分に応じ、都道府県議会議員共済会、市議会議員共済会、町村議会議員共済会が設立されました。
 互助年金制度から共済年金制度への主な改正点は、

① すべての地方議会議員が強制加入となる
② 互助年金法のもとで任意設置であった互助会が、法律の規定にもとづく特殊法人地方議会議員共済会として設置された
③ 互助会の事務費、給付費はすべて議員の負担であったが、地方議会議員共済会の事務費については地方公共団体が負担することとし、給付費については議員の掛金をもって賄うことを原則としながらも、掛金のみをもって賄うことが困難となった場合には、その不足分を地方公共団体が負担することとするなどです。

   このようにして共済年金制度が実施されましたが、給付の種類は互助会当時の3種類の年金のみで、地方公務員の退職年金制度にあった一時金の制度はまだありませんでした。

3 議員年金制度の改正

   昭和37年12月にスタートした地方議会議員の年金制度は、地方議会議員の実態や社会経済情勢に即した数次の改正が行われました。

(1) 一時金制度の創設

   地方議会議員の中には、退職年金の最短の受給資格期間である12年に達する以前に退職する者が多数存在したことから、多額の掛金が掛け捨てになっているとし、昭和40年の第48回国会において、これを救済するべく本法の一部改正(昭和40年法律第103号)において、地方議会議員の年金制度に新たに退職一時金及び遺族一時金の制度が加えられ、同年6月1日から実施されました。なお、この一時金制度の創設に伴い一時金給付の原資に充てるため、掛金率が標準報酬月額の100分の5から100分の7へと引き上げられました。
  一時金制度の実施により給付の種類は、退職年金、公務傷病年金、遺族年金の3種類の年金と退職一時金、遺族一時金の2種類の一時金となりました。これらの給付を総称して「共済給付金」としています。

(2) 共済給付金の公費負担制度の実施

   共済給付金の給付に要する費用については、前記のとおり制度創設当初から議員の掛金をもって充てることを原則とし、掛金のみで賄えない場合には不足する分について地方公共団体が負担するというのが法の趣旨であったものの、実施はされていませんでした。しかし、昭和46年の統一地方選挙により大量の受給者が発生したこともあり、議員年金財政が急激に悪化し、制度存亡の危機を招来しました。
   そこで、議員年金財政健全化のため、昭和46年の第67回国会における本法の改正(昭和46年12月14日法律第119号)において、給付に要する費用の地方公共団体の負担の適用、いわゆる公費負担制度が実施されることとなり、同47年4月1日から施行されました。この公費負担制度の実施に際し、議員の掛金率も標準報酬月額の100分の7から100分の9へと引き上げられました。また、退職年金の算定の基礎となる標準報酬年額も退職前3か年の平均とされました。

(3) 年金額の物価スライド改定の実施

   昭和48年の第72回国会における「昭和42年度以後における地方公務員等共済組合法の年金の額の改定等に関する法律等の一部を改正する法律」(昭和49年6月25日法律第95号)の成立により、昭和41年の第51回国会における本法の一部改正において追加された年金額の改定宣言規定(法第158条の2 「共済会の行う年金である給付の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応じるため、すみやかに改定の措置が講じられなければならない。」)が同49年9月1日から実施されました。

(4) 他の公的年金制度との重複期間に係る控除規定の導入

   地方議会議員の年金制度は、創設当初は互助年金という任意加入の私的色彩の濃いものでしたが、現行制度において強制加入となったことや昭和47年4月から公費負担制度が導入されたことで地方議会議員の年金制度も公的な互助年金として位置付けられました。
   地方議会議員の年金制度に対しても公費負担が行われるようになったことを踏まえ、自身の職業による他の公的年金制度にも加入している場合には、公費の二重適用分について公費負担分の調整をするのが「他の公的年金制度との重複期間控除」で、昭和49年6月の本法の一部改正(昭和49年6月25日法律第95号)により同49年9月1日以後における重複期間について、一定割合により控除されることとなりました。

(5) 退職年金の支給開始年齢の引上げ

   従来、退職年金の支給開始年齢は満55歳でしたが、国民年金と被用者年金制度、国会議員の互助年金制度において支給開始年齢が満60歳に引き上げられる取扱いに準じ、昭和60年12月の本法の一部改正(昭和60年12月27日法律第108号)により、地方議会議員年金制度における支給開始年齢も同様に満60歳へと引き上げられました。ただし、改正法が施行される昭和61年4月1日より前に地方議会議員であった者の支給開始年齢は従前どおり満55歳とされました。
   この支給開始年齢の引上げは平成7年の本法の一部改正(平成7年3月31日法律第52号)においても行われ、満65歳へと引き上げられました。ただし、この改正においても改正法が施行される平成7年4月1日より前に地方議会議員であった者の支給開始年齢は従前どおり満60歳とされました。
   また、この改正では支給開始年齢の引上げに伴う経過措置が設けられ、①昭和20年4月1日以前に生まれた者は満62歳から支給、②昭和20年4月2日から昭和22年4月1日の間に生まれた者は満63歳から支給、③昭和22年4月2日から昭和24年4月1日の間に生まれた者は満64歳から支給とされました。

(6) 特別掛金制度の導入

   上記の支給開始年齢を引き上げる平成7年の法改正においては、被用者年金制度や国会議員互助年金制度等に準じ、共済給付金の給付に要する費用に充てるため、新たに特別掛金制度が導入されました。
   この制度は、平成7年4月1日以後に支給する地方自治法で定める議員の期末手当額の1,000円未満を切り捨てた額に1000分の5を乗じた額を特別掛金として納付するものです。

4 議員年金財政の悪化に伴う制度改正

(1) 平成14年の改正

   共済給付金の給付に要する費用は、議員の掛金と特別掛金、そして地方公共団体の負担とで賄われていました。議員年金財政は、主に共済会の給付の実績や将来の給付に要する費用の予想額に照らしながら掛金率等を引き上げてきたことによって、その均衡を保ってきました。しかし、議員定数の削減により議員数は減少する一方、年金受給期間が延びたこともあり、議員年金財政は掛金と公費負担のみでは給付を賄うことができない状況となりました。このため、平成12年12月から地方議会議員年金制度検討会において議員年金財政安定化への対応策が検討され、その検討結果を踏まえ平成15年4月1日に本法の改正(平成14年5月10日法律第37号)等により給付と負担を見直す制度改正が行われました。
   改正された点は、

① 改正後の退職者の退職年金、退職一時金等の給付水準を従来の8割に引き下げたこと
② 掛金率を100分の13、特別掛金率を100分の5、給付費負担金率を100分の10.5に引き上げたこと
③ 退職年金の年額の算定基礎を退職前12年間の標準報酬月額の総額をもとにした平均標準報酬年額としたこと
④ 他の公的年金制度との重複期間に係る控除率を100分の40に引き上げたこと
⑤ 高額所得による退職年金の支給停止基準額を217万6,000円に引き下げたことなどです。

   なお、この改正では経過措置が設けられ、①制度改正前に議員歴のある者の退職年金および制度改正前から引き続き議員である者の退職一時金の給付水準は従来の9割、②平成17年3月までの特別掛金率は100分の2.5、とされました。

(2) 平成18年の改正

   平成15年4月に議員年金財政の安定化を図る制度改正が行われましたが、その後の市町村の合併の急速な進展により、市・町村の議員年金財政は大きな影響を受けることとなりました。市議会議員共済会においては、合併により受給者が急増し給付総額の増加となり、一方、町村議会議員共済会は議員数の急減による収入面の減少となり両議員共済会は極めて深刻な収支財政状況となり、両議員共済会はともに平成20年度には積立金が枯渇する見込みとなり、都道府県議会議員共済会においても平成31年度には同様に積立金が枯渇する見込みとなりました。このようにいずれの議員共済会においても収支財政は厳しいものとなりました。そこで、このような状況を踏まえ平成17年7月より、地方議会議員年金制度検討会において、地方議会議員の年金制度を将来にわたって安定した制度とするために講ずべき具体的施策について検討され、その検討結果を踏まえ平成18年6月に本法の一部改正法(平成18年6月14日法律第63号)等により給付と負担を見直す制度改正が行われました。
   改正された点は、

① 改正後の退職者の退職年金、退職一時金等の給付水準を従来の12.5%引き下げたこと
② 掛金率を100分の16、特別掛金率を100分の7.5、給付費負担金を100分の16.5(うち、激変緩和措置分100分の4.5)に引き上げたこと
③ 高額所得による退職年金の支給停止基準額を190.4万円以上とするとともに対象となる所得金額も課税総所得金額700万円を総所得金額が500万円を超える場合としたこと
④ 在職加算年数を50年から30年としたこと
⑤ 退職年金受給者の給付水準を10%引き下げること
⑥ 市・町村両共済会の財政単位を一元化し、議員年金制度を一体として支えあう仕組みとしての両共済会の間における財政調整制度が導入されたことなどです。

5 議員年金制度の廃止

(1) 地方議会議員年金制度検討会による検討

   議員年金財政の厳しい状況に対応するため、平成14年と18年の2回にわたり、退職年金や退職一時金等の給付水準を引き下げるとともに、議員の掛金及び特別掛金や地方公共団体の負担金を引き上げるなどの給付と負担の大幅な改正が行われてきました。
   しかしながら、その後、全国的に実施されたいわゆる平成の大合併が大規模かつ急速に進んだことによる議員定数の削減が予想以上に進展したことに加え、行政改革に伴う議員定数及び議員報酬の削減が行われたことにより、市・町村議会議員共済会の財政状況が急速に悪化し、両議員共済会はともに平成23年度には年金を含む共済給付金に要する積立金の枯渇が見込まれる極めて危機的な状況となりました。都道府県議会議員共済会においては、平成34年度に積立金枯渇の見込みとなりました。
   そのため、総務省は、平成21年3月に地方議会議員年金制度検討会を設置し、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会及び全国町村議会議長会と制度の見直しについて種々検討してきました。

(2) 議員年金制度の廃止

   市議会議員共済会は平成22年3月「地方議会議員年金制度に関する適切な措置を求める決議」を取りまとめ、議員年金制度の維持存続について、地方議会議員年金制度に関する適切な措置を求める要請活動を行いました。
   その結果、議員年金財政の厳しい状況や平成18年の国会議員互助年金制度の廃止などを背景とした近年の国民意識の変化を踏まえると、地方議会関係者の合意と国民の理解という双方の要請を満たしながら、今後も持続的な制度として存続させることは、もはや困難であるとの結論に至り、平成23年6月1日をもって地方議会議員年金制度の廃止措置を講ずる法律案が第177回通常国会に提出されました。同法律案は、衆議院・参議院ともに全会一致で可決・成立し、地方議会議員年金制度の廃止措置を講ずる「地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律(平成23年法律第56号、以下「廃止法」という。)」が平成23年5月27日に公布、同年6月1日に施行されました。
   なお、廃止法の施行をもって地方議会議員年金制度は廃止となりましたが、廃止法では、制度廃止時に現職議員である者に係る給付の措置がされ、制度廃止時に既に退職年金、公務傷病年金、遺族年金を受給されている者については、継続して制度廃止前の給付が行われる一方で、退職年金については「退職年金に係る給付の引下げ及び支給停止措置の強化」が行われました。改正された主な点は次のとおりです。

    ① 制度廃止時に既に議員を退職している者に係る給付
      制度廃止時に既に議員を退職して退職年金の給付事由が生じている者については、制度廃止前の地方議会議員年金制度による退職年金の給付を継続すること。
    ② 制度廃止時に現職議員である者に係る給付等
(ア)  制度廃止時に現職議員である者のうち、制度廃止時に退職年金の受給資格(在職12年以上。以下同じ。)を満たす者は、制度廃止前の地方議会議員年金制度による退職年金の支給と掛金及び特別掛金の総額の80%の退職一時金の支給のうちいずれかを選択できること。
(イ)  制度廃止時に現職議員である者のうち、制度廃止時に退職年金の受給資格を満たさない者については、掛金及び特別掛金の総額の80%の退職一時金を給付すること。(遺族一時金も同様の取扱い)
※ 一時金の給付時期は、任期満了を含む制度廃止後最初の退職時とすること。
※ 制度廃止の方針決定後の平成23年1月から5月までに退職した者については、退職時
   に退職年金の受給資格を満たす場合には(ア)、退職時に年金受給資格を満たさない場合
   には(イ)(遺族一時金も同様)の取扱いによること。
    ③ 退職年金に係る給付の引下げ及び支給停止措置の強化
(ア)  ②、③のいずれの場合においても、退職年金について、年額が200万円を超えるときには、当該超える額の10%を引き下げること。
(イ)  ②、③のいずれの場合においても、退職年金について、退職年金の年額と前年の退職年金等を除く所得金額(住民税の課税総所得金額ベース)との合計額が700万円を超えるときには、当該超える額の2分の1に相当する金額の支給を停止するとともに、最低保障額(現行:190.4万円)を廃止すること。
    ④ 公務傷病年金及び遺族年金の取扱い
      公務傷病年金及び遺族年金は、制度廃止前の地方議会議員年金制度による給付を基本として、給付を行うこと。
    ⑤ 平成23年1月分から5月分までの掛金及び特別掛金の取扱い
      制度廃止の方針決定後の平成23年1月以降に退職して退職一時金の給付を受ける者については、同月分から平成23年5月分までの掛金及び特別掛金の全額を退職一時金に算入すること。(遺族一時金も同様の取扱い)
    ⑥ その他
(ア)  制度廃止に伴う経過措置としての給付に要する費用は、地方議会議員共済会(都道府県議会議員共済会、市議会議員共済会及び町村議会議員共済会)が保有する残余の積立金を除き、地方公共団体が負担すること。
※各地方公共団体は、毎年度、現職議員の標準報酬総額に応じて負担する。
(イ)  地方議会議員共済会は、制度廃止に伴う経過措置としての給付を行うため存続するものとし、業務が全て終了したときに解散すること。
(ウ)  地方議会議員共済会は、年金給付に関する処分に関し、支給を受ける者の所得について、官公署等に対して資料の提供等を求めることができること。

   なお、この制度廃止措置には経過措置が設けられ、③の退職年金に係る給付の引下げ及び支給停止措置の強化については、退職年金受給者への一定の周知期間や地方議会議員共済会における一定の準備期間が必要であるため、平成23年9月1日から施行されました。

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