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現行の民法では、婚姻時に夫婦のいずれか一方が姓を改めることと規定しており、社会的な信用と実績を築いた人が望まない改姓を余儀なくされることで、自己同一性を喪失し苦痛を感じる、姓を維持するために法的な保障の少ない事実婚を選択せざるを得ないなどの問題が生じている。
政府は旧姓の通称使用の拡大の取組みを進めているが、一部の国家資格や免許等では旧姓の使用が認められていない。また、通称使用では、自己同一性を喪失する苦痛は解消されず、根本的な解決策にはならないほか、ダブルネームを使い分ける負担、本人や企業等の経済的なコスト、個人識別の誤りのリスクやコストを増大させる等の問題が指摘されている。
さらに、一人っ子同士の結婚や子連れ再婚、高齢での結婚などを検討する人にとっては、特に改姓への抵抗感が強く、中には結婚を諦めてしまう人もいるため、ますます非婚や少子化につながる要因と言われている。
国連の女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し女性が婚姻前の姓を保持する選択を可能にするよう再三にわたり民法の改正を勧告している。さらに、平成 27 年の最高裁判決に続き、令和 3 年 6 月の最高裁決定においても、夫婦同姓規定が合憲とされる一方、夫婦の氏に関する制度の在り方については「国会で論ぜられ、判断されるべき」とされたところだが、依然として国会での議論は進んでいない状況である。
多様性を認める社会、男女共同参画、基本的人権の尊重の観点から、世論の動向や最高裁の判断趣旨も踏まえた上で議論を進め、適切な法的選択肢を用意することは、国の責務である。
よって、国会及び政府に対し、選択的夫婦別姓制度にかかる議論を積極的に行うことを求める。
以上、地方自治法第 99 条の規定により意見書を提出する。
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