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夫婦が必ず同じ氏を名乗ることとしている夫婦同氏制度の下で、婚姻による改姓によって不利益が生じたり、人格権が侵害されたりという事態が生じている。
2020年12月に政府がとりまとめた「第5次男女共同参画基本計画」においては、「夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、戸籍制度と一体となった夫婦同姓制度の歴史を踏まえ、また家族の一体感、子供への影響や最善の利益を考える視点も十分に考慮し、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断を踏まえ、更なる検討を進める」とされている。最高裁判決は、2015年に続いて、2021年にも夫婦同姓規定を合憲とする判断を示す一方で、「国会で論ぜられ判断されるべき事柄にほかならない」と、民法の見直しを国会に委ねている。
現在、国際的には婚姻時に夫婦同姓を強制しているのは日本だけになっている。そして、95%の夫婦では妻が夫の姓に変更している現状があり、女性に負担が偏っている。夫婦に同姓を強制することに対して、国連女性差別撤廃委員会は本年10月、選択的夫婦別姓を導入するように4回目の是正勧告がなされたことを政府は真摯に受け止めるべきである。
国内でも、報道機関が行う世論調査では選択的夫婦別姓の導入を望む声が多数になっている。また日本経済団体連合会は6月に選択的夫婦別姓の導入に関して、「希望すれば、不自由なく、自らの姓を自身で選択することができる制度を早期に実現すべく、政府に提言する」と発表した。提言では旧姓の通称使用の拡大に関して、「ビジネスの現場においても、女性活躍が進めば進むほど通称使用による弊害が顕在化するようになった」と具体的な事例を挙げて指摘している。
夫婦同氏制度によって、アイデンティティの喪失、仕事上の不利益など日常生活・職業生活において、不利益、不便、苦痛が生じており、その解決は国及び国会の責務である。
よって、国においては、民法を改正し、選択的夫婦別姓制度を早期に法改正することを求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
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