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現行の民法では、夫婦が婚姻する際にいずれか一方の姓に改めることが求められており、平成8年に法務省の法制審議会において選択的夫婦別姓制度の導入が検討されてから約 30年が経過したが、その間、社会は大きく変化し、家族や婚姻に対する価値観も多様化している。男女共同参画が進んだ結果、男性が改姓することも珍しくなくなり、望まない改姓を強いられるという課題は、もはや女性だけの問題ではなく、男女共通の関心事となっている。
政府は旧姓の通称使用を広げる取り組みを進めているものの、選択の自由は依然として限られており、改姓に伴う機会損失は解消されていない。令和3年6月の最高裁判所の決定では、夫婦同姓制度を「合憲」としながらも、制度の在り方については国会での議論が必要であると示されている。
選択的夫婦別姓制度は、カップルに選択の自由を与える可能性を持っているが、その一方で日本の独自の戸籍制度がその存在意義を問われる局面が訪れることも予想される。戸籍制度が意義を失うことで生じる経済的、社会的、文化的な影響は、未だに具体的には見えていない。また、この制度は夫婦には選択の自由を提供するものの、子どもたちには選択肢を制限する可能性もある。
これらの課題は、選択的夫婦別姓制度を望む人々だけでなく、日本全体の問題でもあると考えるが、十分な議論が行われていない。
したがって、国は多様性を認める社会、男女共同参画、基本的人権の尊重の観点から、世論や最高裁判所の趣旨を考慮しながら、社会に開かれた形で選択的夫婦別姓制度に関する議論を進めるよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
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